#アズサ
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「先生、相談があるんですけど」
髪を後ろで一つにくくり、青白い顔をした女子生徒がそう話しかけてきた。
確か名前は、井上アズサさん。
いつもこの子と一緒にいる二人が、あだ名は『キンギョ』なんだよ、と言っていた。由来は教えてくれなかったけれど。
「あらどうしたの? 井上さん」
一緒にいる二人とは対照的に、この子はあまり目立つタイプではない。だから多分、話しかけられるのは今回が初めてだ。
「私最近、あの二人から、というかみんなからハブられてる気がするんです」
どぐんと心臓が鳴った。
え、それってつまり……イジメ?
「えっ…と。で、でもちょっと無視されるだけでしょ? 先生もね、中学の頃よくあったのよ。でも大丈夫。すぐ収まるから」
やめてよ、お願いだから。私のクラスでイジメなんてあっちゃいけない。
これは『ちょっとしたイタズラ』として収めなくちゃいけない。
「…そうですか」
落胆。
まさにそんな感じだった。
先生もそうなんですね、と言うような生気の無い瞳が私を見つめる。
大丈夫。私は正しい。
正しい選択。
事を大きくしない方が、良いに決まっているもの。
一人の不幸より、皆んなの幸せの方が大切なのだから。
#創作小説 #アズサ
髪を後ろで一つにくくり、青白い顔をした女子生徒がそう話しかけてきた。
確か名前は、井上アズサさん。
いつもこの子と一緒にいる二人が、あだ名は『キンギョ』なんだよ、と言っていた。由来は教えてくれなかったけれど。
「あらどうしたの? 井上さん」
一緒にいる二人とは対照的に、この子はあまり目立つタイプではない。だから多分、話しかけられるのは今回が初めてだ。
「私最近、あの二人から、というかみんなからハブられてる気がするんです」
どぐんと心臓が鳴った。
え、それってつまり……イジメ?
「えっ…と。で、でもちょっと無視されるだけでしょ? 先生もね、中学の頃よくあったのよ。でも大丈夫。すぐ収まるから」
やめてよ、お願いだから。私のクラスでイジメなんてあっちゃいけない。
これは『ちょっとしたイタズラ』として収めなくちゃいけない。
「…そうですか」
落胆。
まさにそんな感じだった。
先生もそうなんですね、と言うような生気の無い瞳が私を見つめる。
大丈夫。私は正しい。
正しい選択。
事を大きくしない方が、良いに決まっているもの。
一人の不幸より、皆んなの幸せの方が大切なのだから。
#創作小説 #アズサ